旅の物語 2026年7月18日 公開 Triplogue 編集部

子どもがはじめて海を見た日——しおりから始まった、ある家族の話


水辺で遊ぶ女の子
Photo by Leo Rivas on Unsplash

これは、ある家族の話です。

横浜に住む、共働き夫婦と、8歳の娘、5歳の息子。伊豆下田、2泊3日の夏休み

その旅は、いつもの家族旅行とは少しだけ違っていました。準備の段階から、家族のかたちが変わり始めていたのです。


旅の準備が、いつもより楽だった夏

海辺で手をつないで歩く家族
Photo by Natalya Zaritskaya on Unsplash

「ねぇ、ちょっと聞いて」

夕食のあとのリビング。妻はノートパソコンの画面を、夫に向けて見せた。

「今年の家族旅行、しおりを作ってみない?」

夫は箸を置いて、画面をのぞき込んだ。表示されていたのは、彼が見たこともないような、家族向けのしおりのテンプレートだった。

「これさ、AIに『家族で伊豆、5歳と8歳の子どもあり』って入れたら、行程まで作ってくれるんだって」

「へぇ……。それ、君が一人でやってきたやつ、全部?」

「全部じゃないけど、叩き台にはなる。あとは家族でカスタマイズする」

その夜、夫婦は子どもたちをリビングのテーブルに呼んだ。

「今年の旅行、みんなで作ろうと思って」

5歳の息子は、目を丸くした。

「ぼくも?」

「うん。何したい?」

「えーっと……海ではしごしたい」

8歳の娘が笑った。

「はしゃぐ、でしょ」

「うん。はしゃぐ」

しおりに、子どもの言葉がそのまま書き込まれた。誰も訂正しなかった。

8歳の娘は、夜の花火大会を予定に入れたがった。夫は、子どもの希望にひとつだけ、自分の希望を足した。「朝の散歩、海岸線」。妻は、その日のうちに行程をしおりに反映させた。

旅の準備が、その夜のうちに終わった。妻は、いつもなら週末をまるまる使う作業が、家族で過ごす2時間で終わったことに、少し驚いていた。


出発の朝、子どもがしおりを手にした瞬間

日中の家族の写真
Photo by Mika Baumeister on Unsplash

出発の日、4人は車の前に並んだ。妻が、印刷したしおりを4部、家族に1部ずつ渡した。

8歳の娘は、表紙を開いてページをめくった。

「あ、海行くんだ!」

「知ってたでしょ」

「うん、でもこうやって書いてあると、なんか本物っぽい」

5歳の息子は、自分の手のなかのしおりを、両手で支えるように持っていた。表紙には、彼が前の夜に描いた、波と太陽の絵が印刷されていた。

「これ、ぼくの?」

「うん」

「ぼくが描いたやつ?」

「うん」

息子は、しおりを胸に抱えて、車に乗り込んだ。

運転席に座った夫が、ハンドルを握りながら、妻に小声で言った。

「俺もしおり持ってるの、なんか嬉しいな」

妻は、振り返って後部座席を見た。8歳の娘は、しおりの行程表を読んでいる。5歳の息子は、まだ表紙の絵を見ている。

——私だけが知ってる旅じゃなくて、家族みんなの旅になった気がする

そう、思った。


「うわぁ……」——海を見た日

水辺の母と子ども
Photo by Xavier Mouton on Unsplash

伊豆下田、白浜海岸。車を駐車場に停めて、ドアを開けたのは、5歳の息子だった。

砂浜への入り口で、彼は立ち止まった。

振り返らなかった。父にも、母にも、姉にも。

ただ、海を見ていた。

妻が、声をかけようとして、口を閉じた。

夫は、車のドアにもたれて、息子の背中を見ていた。小さく、つぶやいた。

「あの背中、覚えとこう」

8歳の娘が、弟の隣にそっと立った。何も言わずに、肩を組んだ。

5歳の息子の口から、小さく、聞こえるか聞こえないかの声で——

「うわぁ……」

夫が、スマホを取り出して、シャッターを切ろうとした。

その手が、止まった。

「いや、この瞬間は、写真より、心に残ったほうがいい」

カメラはおろした。代わりに、彼は息子の背中を、ただ見ていた。

10秒ほど経って、5歳の息子は、突然走り出した。砂浜を、海に向かって。

「待って!」と妻が叫び、

「靴を脱げ!」と夫が叫び、

「お兄ちゃん、待ってよー!」と娘が追いかける。

夏の音が、白浜海岸に響いた。


旅の途中、しおりが家族をつなげた小さな瞬間

ゴールデンアワーの海辺を歩く5人
Photo by Kevin Delvecchio on Unsplash

翌日の朝、ホテルから次の目的地への車中で、5歳の息子がしおりを開いた。

「今日のお楽しみ、なに?」

しおりの「お楽しみページ」には、旅ビンゴが書かれていた。「カモメを見つける」「アイスを食べる」「海岸でシーグラスを拾う」——

「カモメは昨日見たから○」

「アイス、ホテルで食べたから○」

「シーグラスは……これから?」

8歳の娘が、しおりの行程表を見て言った。

「今日は何時に次のホテル?」

夫が答える前に、娘は自分でページをめくった。

「あ、5時か。じゃあ、シーグラス拾う時間ある」

妻が、運転席の夫の横顔を見て、思った。

——いつもなら、全部私が答えてた。「今日どこ?」「次なに?」「ご飯何時?」——子どもたちの質問は、いつも私に向かっていた。

それが、今日は、しおりに向かっていた。

「しおりが、家族の共通言語になったんだな」

夫が、信号待ちで、ぽつりと言った。


帰宅後、しおりに写真が加わった夜

色鉛筆でテーブルに座る女の子
Photo by Kelly Sikkema on Unsplash

旅から戻ったその日の夜。家族はリビングのテーブルに集まった。

スマホで撮った写真が、何百枚もある。そのなかから、しおりの「振り返りページ」に貼る写真を、家族で選んだ。

5歳の息子は、迷わず1枚を指した。

「これ、ぼくの!」

海で笑っている、自分の写真だった。

8歳の娘は、4人で撮った集合写真を選んだ。

「これがいい。全員いるから」

紙に印刷して、しおりに貼った。糊で、ゆっくりと、丁寧に。

家族の手から、しおりが、完成品になった。

スマホの中には、もう一冊、デジタルのフォトブックも自動で組まれていた。けれど、家族の手元に最後に残ったのは、紙のしおりだった。子どもたちが、それを大切そうに持って、それぞれの部屋に持ち帰った。

その夜、夫が妻に言った。

「来年も、こうやって、続けたいな」

妻は、うなずいた。


1年後、もう一度しおりを開いたとき

机の上のカメラ・本・バッグのフラットレイ
Photo by Annie Spratt on Unsplash

翌年の夏休み前のこと。

6歳になった息子が、リビングのテーブルに、去年のしおりを置いた。

「ねぇ、今年も海行こうよ」

「去年は楽しかった?」

「うん。すごく楽しかった」

8歳になった娘も、隣に座って、しおりを開いた。

「あ、去年のシーグラス、まだ持ってる」

「私も、お楽しみページ全部○つけたよ、覚えてる」

夫婦は、子どもたちが去年のしおりを話題にしている横で、目を合わせた。

「物として残ると、ちゃんと、思い出になるんだな」

「うん」

その日の夜、新しいしおりの準備が始まった。今年は、息子が「ぼくの絵、また表紙にしていい?」と聞いた。

「もちろん」

しおりは、毎年、家族と一緒に育っていく。


あとがき——もし、あなたが今年の夏に

物語は、ここまでです。

家族旅行の思い出を残すのは、写真だけじゃありません。しおりは、旅の前から「楽しみ」を作り、旅の後も「物語」を残す道具です。

ある家族の話、と書きましたが、似たような瞬間は、どの家族にもきっとあります。子どもがはじめて海を見た日、はじめて新幹線に乗った日、はじめて雪に触れた日——その瞬間を、家族の手元に残す方法を、今年の夏は試してみませんか。

AIで叩き台を5分、家族で25分。それだけで、家族の時間が少し変わります。

Triplogue は、家族向けの旅のしおりをAIで作るアプリとして、2026年7月後半末に正式公開予定です。先行登録の方には、「家族旅行モデルしおり」テンプレートをプレゼントしています。

良い旅を、家族で。