旅の物語 2026年7月22日 公開 Triplogue 編集部

三世代旅行のしおり——祖父母と孫娘の紅葉旅、ある家族の物語


窓辺のテーブルを囲む人々
Photo by Lena Polishko on Unsplash

これは、ある三世代の家族の話です。

40代前半の妻と、夫、5歳の娘。そして、妻の両親(70代)。栃木県・那須高原と鬼怒川温泉、紅葉シーズンの1泊2日

旅の準備の段階から、家族のかたちが少しだけ変わり始めていました。


両親を旅行に誘うか、迷っていた10月の夜

机の上のカメラ・本・バッグのフラットレイ
Photo by Annie Spratt on Unsplash

「ねぇ、今年、お父さんとお母さんも誘ってみない?」

夕食のあと、妻はリビングで、夫にぽつりと言った。

「いいんじゃない?」

「でも、準備が大変って言われそうで……。お母さん、最近少し疲れやすいって言ってたし」

夫はテレビを止めて、妻の顔を見た。

「楽な準備にすればいいだけだろ」

それから5分ほど考えて、妻は両親に電話をかけた。

「ねぇ、今度の連休、那須に紅葉見に行こうかと思ってるんだけど、お父さんとお母さんも一緒にどう?」

父:「おお、那須か。俺は行ったことないなぁ」

母:「あら、いいわね。でも、準備が大変じゃない?」

電話を切ったあと、妻は少し考えた。準備を大変だと感じさせずに、楽しみだけを届ける方法はないか。

——しおりを作って送ってみよう

そんな考えが浮かんだ夜だった。


しおりが、両親に届いた日

ノートに書き込む手元
Photo by Glenn Carstens-Peters on Unsplash

妻は、その週末にパソコンを開いて、家族向けのしおりを作った。AIに「那須高原、紅葉、5歳の娘、祖父母同行」と伝えると、行程の叩き台がすぐにできた。

5歳の娘が、机の横でじっと見ていた。

「ママ、なにしてるの?」

「おじいちゃんとおばあちゃんと、紅葉見に行くしおりを作ってるの」

「わたしも、何か描いていい?」

「もちろん」

娘は色鉛筆で、表紙にコスモスの絵を描いた。それをスキャンして、しおりに貼った。

QRコードを生成して、両親にLINEで送った。

数時間後、母から電話があった。

「あら、これすごいわね。栃木の紅葉、もう何十年も前に行ったわ。あなたたちが生まれる前」

父も電話を代わった。

「俺は那須は初めてだ。楽しみだなぁ」

しおりが、旅の前から両親の気持ちを動かしていた


出発の朝、5人の旅が始まった

電車で旅する人々
Photo by Jeremy Kwok on Unsplash

連休の朝、家族は東京駅で両親と待ち合わせた。

新幹線のホームで、母が手提げから何かを取り出した。

「私もね、しおり、印刷してきたわよ」

5歳の娘が、目を丸くした。

「おばあちゃん、わたしと同じだ!」

紙のしおりが、4人と1人、合計5人の旅を「同じしおりを持つ家族」にしていた。

妻は、新幹線の窓の外を見ながら、思った。

——両親も、最初から仲間だったんだ


紅葉の中で、祖父が孫娘に語った話

丘を登る親子
Photo by BEN ELLIOTT on Unsplash

那須高原の紅葉スポットに着いたのは、午後3時を過ぎた頃だった。光が傾き始めていた。

祖父が、5歳の娘の手をそっと握って、ゆっくりと散歩を始めた。

「あの山、お父さんが小さい頃にね……」

孫娘が見上げる。

「えー、パパも小さかったの?」

「あったよ、あったよ。5歳の頃、那須じゃないけど、似たような山に行ったことがあるんだ。お父さんは、こんなふうに紅葉の落ち葉を集めて、ポケットいっぱいに入れて、帰ってきたんだよ」

「ポケットに?」

「うん。お母さんに『家で散らかさないでよ』って怒られてたなぁ」

孫娘が、けらけらと笑った。

少し離れた場所で、妻はその2人の後ろ姿を見ていた。夫は別の方向で、母と話していた。

——祖父と孫が、私を介さずに繋がっている

そう気づいたとき、妻は少し驚いた。今までの家族旅行は、いつも妻が「司令塔」だった。両親と娘の間にいて、話を繋いでいた。

でも、今日は違う。祖父と孫娘は、自分たちで会話をしている。妻は、ただ後ろから見ているだけだ。

紅葉が風に揺れた。夕方の光が、3世代の影を長く伸ばしていた。


温泉の夜、世代を超える時間

海辺で手をつないで歩く家族
Photo by Natalya Zaritskaya on Unsplash

その夜、鬼怒川の温泉宿に着いた。

夕食のあと、祖母と孫娘が一緒に大浴場へ向かった。

「おばあちゃん、お風呂大きい!」

「広いわねぇ。気持ちいいわぁ」

湯船に入って、孫娘は祖母の腕に触れた。

「おばあちゃんの肌、つるつるだよ」

祖母が笑った。

「あなたの肌は、もちもちね」

笑い声が、湯気の中に消えていった。

夫婦は別の風呂で、ぼんやりと湯に浸かっていた。

「今日、すごくよかったね」

「うん」

「両親、また連れてきたいな」

夫は、目をつぶったまま、ゆっくりとうなずいた。


しおりに、祖父母から書き込みが

白い紙に絵を描く女の子
Photo by Vika Fleysher on Unsplash

旅から戻る前夜。宿の部屋で、家族はしおりを開いた。

「振り返りページ」が、まだ空白だった。

祖父が、ペンを手に取った。

「もう一度、若い頃に戻ったような旅だった。ありがとう」

祖母も、書いた。

「孫と入った温泉、忘れない」

5歳の娘が、自分のページに、こう書いた。

「おじいちゃんの て、あったかかった」

妻が、その書き込みを目で追って、息を止めた。

夫が、横から覗き込んで、何か言おうとしたが、口を閉じた。

しおりが、家族の手紙になった瞬間だった。


1年後、次のしおりを「みんなで」

夕日の中でくつろぐ人々
Photo by Arthur Poulin on Unsplash

翌年の春のこと。

妻は、両親に電話をかけていた。

「ねぇ、お母さん。今年も、どこか行きましょうよ」

母:「そうねぇ。今度は、桜の頃がいいわね」

父も電話に出た。

「おお、桜か。しおり、また作ってくれるんだろう?」

妻は、少し笑った。

「もちろん。でも、今度は、お父さんとお母さんも、一緒に作ろう

電話の向こうで、母が小さく「あら」と言った。

「私たちも、作れるかしら」

「作れるよ。QRで送るより、最初から一緒の方が、もっと楽しいと思って」

電話を切ったあと、妻はリビングのテーブルに、去年のしおりを置いた。

紅葉のページに、祖父の書き込み。温泉のページに、祖母の書き込み。孫娘の「あったかかった」の一行。

——しおりは、世代を超える共通言語になった

そう、思った。


あとがき——三世代の旅で、しおりが効くわけ

物語は、ここまでです。

三世代旅行は、計画が大変な分、思い出も深い旅になります。けれど、その「計画の大変さ」が、両親を誘うハードルになることもあります。

しおりが、家族みんなの共通言語になることで、世代を超えた繋がりが生まれます。両親に「準備の負担」を見せずに、楽しみだけを届ける——その小さな配慮が、旅の質を変えることがあります。

「両親を誘うのは大変かも」と思っている方へ。まずは、しおりから始めてみてください。

Triplogue は、家族向けの旅のしおりをAIで作るアプリとして、2026年8月末に正式公開予定です。先行登録の方には、「家族旅行モデルしおり」テンプレートをプレゼントしています。

良い旅を、家族で。